近年、歩道橋、駅の通路、ビルの玄関を始め各建築物の通路、ホールにおいて転倒負傷・死亡事故が急増し、交通事故を上回る勢いで増加の一途をたどっている状況です。

その原因として「床材のすべり抵抗係数が低い」ことがあげられています。特に雨などで床が濡れた状況でのすべり抵抗係数の低下が多くの要因となっています。

平成24年8月にバリアフリー新法「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」が改訂され、「床の滑りについて、評価指標はJIS A 1454 に定める床材の滑り性試験によって測定される滑り抵抗係数(C.S.R)を用いる。」と記されました。

転倒事故が発生すれば、事故当時における床の「すべり抵抗係数」によって管理者の責任が問われることがあります。訴訟事例、判例を見てもそのことが重要視されるようになり、防滑業振興協会にも訴訟関連の測定依頼が増えてきました。

バリアフリー新法
高齢社会対策と共生社会の実現の為、平成18年12月20日に施工された法律です。(正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」)

国土交通省住宅局建築指導課の主導により、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」が改定され、改定後は「床の滑りについて、JIS A1454 に定める床材の滑り性試験によって測定される滑り抵抗係数(C.S.R)等により、参考となる推奨値や配慮事項等を示す」と記されることになりました。

※以下、一部抜粋
4.10 床の滑り
床の材料及び仕上げは床の使用環境を考慮した上で、高齢者、障害者等が安全かつ円滑に利用できるものとする。

(1)履物着用の場合の滑り

■表―1 履物着用の場合の滑り日本建築学会※の推奨値(案)
床の種類単位空間等推奨値(案)
履物を履いて動作する床、路面敷地内の通路、建築物の出入口、
屋内の通路、階段の踏面・踊場、
便所・洗面所の床
C.S.R=0.4 以上
傾斜路(傾斜角:θ)C.S.R−sinθ=0.4 以上
客室の床C.S.R=0.3 以上

(2) 素足の場合の滑り(※ここでは大量の水や石鹸水などがかかる床を想定)

■表−2 素足の場合の滑り日本建築学会※の推奨値(案)
床の種類単位空間等推奨値(案)
素足で動作し大量の水や石鹸水などがかかる床浴室(大浴場)、プールサイド
シャワー室・更衣室の床
C.S.R・B=0.7 以上
客室の浴室・シャワー室の床C.S.R・B =0.6 以上

(3)滑りの差
・突然滑り抵抗が変化すると滑ったりつまずいたりする危険が大きいため、同一の床において、滑り抵抗に大きな差がある材料の複合使用は避けることが望ましい。