近年転倒事故が増加の一途を辿っています。交通事故などとは違いあまり報道はされませんのでご存知の方は少ないかもしれませんが、現在歩行中のスリップや転倒事故で亡くなる方は、年間5,000人を超えている状況です。
死亡に至らないまでも、転倒事故がきっかけで寝たきりや後遺障害になるケースも少なくありません。
転倒事故が増加する要因の一つは高齢化
屋内外を問わず元気に活動できる高齢者が増えてきたこと(これらはとてもうれしいことです)が、軽快に歩くことが難しい人々や、転倒した場合ケガをする可能性が高くなる人々が増加したことも意味します。要するに転倒事故そのものの潜在因子が増加してしているのです。
美観・デザインが重視され、雨や水道水などで濡れた状態になると滑りやすくなる床材では、(特に高齢者の方は)滑った際にバランスがとれず転んでしまう事が多いようです。
防滑対策の不備(対策の遅れ)
平成24年8月にはバリアフリー新法「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」が改訂されるなど、安全管理への意識は高まっています。その為、新規の建築物に関しては設計段階から段差や建築部材などを考慮して安全対策を行う事ができますが、すでに建てられた建築物の多くは、安全対策が間に合っていません。
既存の建築物は、利用者の生活行動の中で作業を行わなければいけない為、特に駅などの交通機関や公共性・商業性の高い施設での防滑対策は、その為に長期間に渡る改修工事を行うことは非常に困難です。
応急処置は、応急処置でしかありません。
滑りやすい床・階段などに、滑り止めテープや滑り止めシートを使用して対策を取ることもできますが、耐久性があまり高くありませんので、定期的に張替え・取替えなどの作業が必要になりますし、汚れが目立ちやすく美観を損ねるというマイナス面が伴います
美観と安全のジレンマ
安全対策が大切なことは誰もが理解しています。しかしその為に美観を著しく損ねることを止むなしと受け入れるのが困難なことも確かです。
商業施設やビル・マンションなどでは、高級感の感じられる光沢性の高い床材が用いられることが多く、安全対策の為とはいえ、その美観を損ないたくないという理由も、防滑対策の遅れにつながっていると考えられます。
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